WORKS

スマイルリンクル ブランドムービー制作

東京・神田の街で1994年の創業以来、30年以上にわたって愛され続けている株式会社スマイルリンクル様。今回、私たち株式会社moodは、同社のブランドムービー制作を担当させていただきました。担当は杉田。神田駅の雑踏から夜の繁華街、そして「酒場五郎」「Big-Pig」「Tchin-Tchin GORO」など同社が運営する個性豊かな店舗の現場まで、77秒のなかに「笑い皺」を生み出し続けてきた30年の哲学を凝縮しています。

企画・構成から撮影、編集、ディレクションまで一貫して担当した本作。お客様とスタッフの間に自然と生まれる笑顔と、その笑顔が重なって刻まれていく「笑い皺」。この目に見えにくい価値を、どう映像という形に翻訳するか。それが今回の挑戦でした。

「美しく、自分らしく。いいムードをつくる」──moodがこれまで大切にしてきたフィロソフィーを胸に、スマイルリンクル様の世界観に深く寄り添いながら制作した本作のプロセスをお伝えします。

このブランドの根っこにあるもの

株式会社スマイルリンクルは、神田駅周辺を中心に「Big-Pig」「酒場五郎」「酒場ゴロー」「Tchin-Tchin GORO」「ラムゴロー」「小籠包マニア」など、個性豊かな飲食店を展開する企業です。1994年の創業から30年、入れ替わりの激しい東京の飲食業界で愛され続けてきた背景には、一貫した哲学がありました。

「東京には様々な飲食店が立ち並び、入れ替わりも激しい。そんな中30年以上、商売を続けてこれたのは、お客様の胃袋だけじゃなく『心』も満たす『優しいあきんどの精神』が代々受け継がれているからだと思います」──これは公式サイトに掲げられた言葉です。

社名「Smile Wrinkle(スマイルリンクル)」は、英語で「笑い皺」を意味します。同社が掲げるミッションは「関わる人々の『笑い皺』を『食』を通じて創造する」。お客様とスタッフが目を合わせ、自然とこぼれる笑顔。その笑顔が何度も何度も重なって、やがて顔に刻まれる「笑い皺」こそが、このブランドの宝物なのです。今回のブランドムービーは、この企業哲学そのものを映像で体現する仕事でした。

企画|「笑い皺」を映像言語に翻訳する

企画段階で自分が最初に向き合ったのは、「Smile Wrinkle」という社名が持つ意味の深さでした。単なる笑顔ではなく、時間をかけて積み重なり、人の顔に刻まれていく「皺」。これは一瞬の表情では表現できない、時間と関係性の物語です。

そこで本作の企画コンセプトを「日常のなかにある、かけがえのなさ」に定めました。神田という街で30年続いてきたということは、毎日毎日、誰かにとっての「いつものお店」であり続けたということ。その当たり前の積み重ねこそが、ブランドの本質だと考えたのです。

また、現代社会の文脈も意識しました。AIや情報技術が急速に進化し、便利さがどこまでも追求される時代。だからこそ「人と人とのつながり」を生む飲食店の価値は、むしろこれから際立っていく。この時代背景を映像のなかに織り込むことで、スマイルリンクル様の存在意義を浮かび上がらせる構造を企画しました。

構成|77秒で描く、街と人と笑顔の物語

構成は大きく3つのパートに分けました。前半は「街の日常」、中盤は「問いと答え」、後半は「人とミッション」という流れです。

冒頭は神田駅のホームから始まります。「いつものところに行こうか」というコピーとともに、見慣れた駅の風景が映し出され、続いて夜の神田の街並みへ。「今日は何食べようか」というフレーズで、視聴者を一気に同社の世界へ引き込みます。誰もが経験する日常の感覚から入ることで、ブランドが特別な存在ではなく、生活に寄り添う存在であることを伝えました。

中盤では一度モノクロのトーンに切り替え、「たくさんのモノや情報が溢れ、ますます便利になっていく社会」という現代の風景を提示。AIやコード、スクランブル交差点を行き交う人々といったモチーフを用いて、便利さの裏で希薄になりがちな人間関係を暗示します。そこからアイボリーカラーの背景に転じて「だからこそ、人と人とのつながり」というメッセージへ。トーンの切り替えそのものが、視聴者の心の動きを設計する装置になっています。

後半は「優しい人」「強い人」「愛嬌のある人」というスマイルリンクル様が大切にする3つの人物像、そして「損得よりも、誰かの笑顔をいちばんに」という価値観を経て、ミッション「関わる人々の『笑い皺』を『食』を通じて創造する」へと着地します。最後にロゴが現れる構成は、視聴後に余韻として「笑い皺」というキーワードが残るよう設計しました。

ディレクション|店舗・スタッフ・お客様への敬意を演出に込める

ディレクションで最も意識したのは、スマイルリンクル様が運営する各店舗の個性と、そこで働くスタッフの皆様、そしてお店に通うお客様への敬意です。映像に映る一人ひとりが、「演じている」のではなく「いつもの自分でいる」状態をどう引き出すか。これがディレクションの核でした。

たとえば「Big-Pig」は日本一広島カープファンが集まる店として知られています。そのアイデンティティを尊重し、CARPのユニフォームを着た常連客の方々が心から楽しそうに笑う瞬間を、自然な空気感のまま切り取りました。「酒場五郎」では、神田駅西口で愛され続ける大衆酒場の活気と、スタッフが客席に向ける視線のあたたかさを丁寧に拾っています。

また、ディレクションのもう一つの軸は「ハンディカメラ風のレトロ演出」を中盤に挿入する判断でした。あえてプロフェッショナルな映像のなかにアマチュアっぽい質感を混ぜることで、「お客様自身が撮っているような、その場にいるような感覚」を生み出しています。完成された映像ではなく、関わった人の記憶のなかにあるような映像表現。これが「余韻」をデザインするという私たちの姿勢につながっています。

撮影|現場の温度を逃さず捉える

撮影は神田の街並みから各店舗の内部まで、複数のロケーションで実施しました。1994年から30年続く店の空気は、セットでは再現できません。実際の営業中の店内、お客様が来店される時間帯、スタッフが仕込みをする厨房の様子など、リアルな時間の流れのなかで撮影を進めました。

店内撮影で特に大切にしたのは、スタッフの皆様の自然な表情です。「目が合えば自然にこぼれる笑顔」というコピーに対応するシーンでは、スタッフ同士のやり取りや、お客様との会話の合間にふと見せる表情を逃さないよう、カメラとの距離感を慎重に調整しました。意識させすぎず、しかし狙ったタイミングは確実に押さえる。この匙加減が現場の空気を映像に定着させる鍵でした。

また、夜の神田の繁華街の撮影では、酒場五郎の提灯が連なる外観や、「カラオケ館」「Tchin-Tchin GORO」のネオンが灯る通りなど、街の歴史と賑わいを象徴する画を意識的に押さえました。同社の店舗が、神田という街そのものと一体になって息づいていることを、画面のなかで成立させたかったからです。