居酒屋甲子園2025 ステートメント動画制作
2025年11月11日、パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された「第18回 居酒屋甲子園 全国大会」。約4,000名が集う飲食業界最大級のこの祭典で、来場者の心を一気に大会の世界観へと引き込む役割を担うのが、開会前に上映されるステートメント動画です。今回、株式会社moodは本動画の企画・構成・編集・ディレクションを一貫して担当させていただきました。担当ディレクターの杉田として、制作の裏側にあった想いをお話しします。
今大会のテーマは、第1回大会から数えて再び掲げられた「夢」。9代目理事長・和田裕直氏(株式会社てっぺん 代表取締役)が掲げた、業界に従事するすべての人へ向けた問いかけです。その大きな問いに、約53秒という限られた尺でどう応えるか。自分たちが向き合ったのは、まさにその一点でした。
飲食業界の現場で日々奮闘するすべての人に、もう一度「自分の仕事は誇れる」と思ってもらえる映像を。そんな願いを込めて、課題と挑戦、苦悩と誇り、その二元論では語れない価値観を一本の物語に編み上げました。
このイベントの根っこにあるもの
居酒屋甲子園は、NPO法人居酒屋甲子園が主催する、全国の飲食店が理念と現場力をぶつけ合う業界最大級の祭典です。掲げる理念は「共に学び、共に成長し、共に勝つ。」。単なるコンテストではなく、外食業界全体を底上げするための学びの場として、第1回から18年にわたり続いてきました。
9代目理事長に就任した和田裕直氏は、2025年のテーマを再び「夢」と定めた理由をこう語っています。「夢と聞くと、少し遠く感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも私は、心が震えるもの、ワクワクするもの。『やってみたい』『知ってみたい』『行ってみたい』。そう感じた瞬間、それはもうすでに“夢”なんだと思います」。飲食業は決して楽な仕事ではありません。それでも、お客様の笑顔や感謝の言葉をダイレクトに受け取れる、誇れる職業である。その本質を、業界の内外に改めて伝えたい。今回のステートメント動画は、その想いを映像という形で代弁する役割を負っていました。
企画|「夢」という一語を、現場の体温で語り直す
企画段階で最初に決めたのは、「夢」という抽象語を、上から押し付けるように語らないということでした。飲食の現場には、毎日のように課題や困難が押し寄せます。そのリアルから目をそらした“きれいごとの夢”は、来場者である経営者や現場スタッフの皆さんには絶対に届かない。そう確信していました。
だからこそ、冒頭はあえて「課題や困難が絶えない毎日は、まるで終わらないドラマのよう。」というシビアな一言から始める構成にしました。視聴者の現実に一度寄り添い、そこから「しかし、その苦悩こそが物語を深く」していくのだ、と転調させる。痛みを通過した先にこそ夢があるという企画の骨格を、最初の10秒に込めています。
株式会社moodがいつも大切にしている「余韻」をデザインし、記憶に残る体験を、というフィロソフィー。その出発点は、表面的な感動ではなく、見る人自身の物語に静かに火を灯す設計だと考えています。今回も、来場者一人ひとりが「自分の話だ」と感じられる入口を企画段階から徹底的に磨きました。
構成|「挑戦」「恐怖」「誇り」、二元論を超えた53秒の旅
構成では、ナレーションとビジュアルを縦軸と横軸のように組み合わせ、53秒という短尺の中に感情の起伏を何度もつくり込みました。前半は雑踏や会議室といった日常の風景から始まり、中盤で「挑戦」「恐怖」というキーワードを大きく画面に立ち上げる構成にしています。続いて「二元論では語れない価値観がある。」というメッセージで一度静寂をつくり、後半で居酒屋の店内、スタッフの笑顔、満席のカウンターでの乾杯シーンへと一気に温度を上げていく流れを設計しました。
クライマックスに置いたのは、全国大会のステージで歓声に包まれる出場者の映像と、「あなたの夢はなんですか?」という問いかけ。視聴者をただ感動させて終わるのではなく、最後に一人ひとりの胸の中へ問いを投げ返す構成にしたのは、この動画が翌年の第19回、そして日本武道館開催を目指す未来へ続いていくための“余韻”を残したかったからです。
ディレクション|全国の現場と全国大会、二つの熱量を一本に束ねる
ディレクションで一番神経を使ったのは、動画に登場するすべての要素のトーンを統一することでした。広告ストックの俯瞰映像、現場で働くスタッフの実写、抽象的なグラフィックインサート、そして全国大会本番のステージ映像。これらは本来、まったく異なる文脈を持つ素材です。それを「夢」という一語のもとに束ね、一本の語り口として違和感なく着地させる。そこに最も時間を使いました。
ナレーションの言葉選びは、ステートメントを書き上げた段階から声に出して何度も読み直し、現場で働く人たちが聞いたときに胸に落ちる温度感を探りました。グラフィックの色設計も、暗から明、モノクロからフルカラーへと感情曲線に合わせて推移させ、最後の書道調のロゴで一気に静寂に着地させる。すべてのカットが「夢」というゴールに向かって設計されています。美しく、自分らしく。いいムードをつくる。そんな自分たちの仕事の流儀を、全国大会という大きな舞台の幕開けにふさわしい形で結実させたつもりです。
編集|静と動の呼吸で、4,000名の心拍を揃える
編集工程では、パシフィコ横浜の大ホールという広大な空間で約4,000名が同時に観るという前提を常に意識しました。スマートフォンで見るのとは違い、巨大スクリーンと音響で体感される映像は、わずかなテンポのズレが空間全体の空気を冷ましてしまいます。だからこそ、カットの切り替わりの一フレーム単位までこだわり、ナレーションの息継ぎと映像の切り替わりが完全に同期するよう調整しました。
特に意識したのは、「静」と「動」の呼吸です。前半の抽象パートではあえて間を残し、後半の居酒屋シーン以降は心拍を上げるようにテンポを加速。最後のホワイトアウトから「居酒屋甲子園」の書ロゴが立ち上がる瞬間に、会場全体が同じ呼吸になるよう編集の山場を設計しています。来場者が席に座って動画を見終えた直後、本大会のオープニングへと自然に気持ちが流れ込む。その導線をつくることが、ステートメント動画に求められる本当の役割だと考えています。
居酒屋甲子園2025の最新情報はこちらから
第18回大会の振り返りや、日本武道館開催を目指す次回大会の最新情報は、NPO法人居酒屋甲子園の公式サイトで随時更新されています。全国の飲食店が「共に学び、共に成長し、共に勝つ」姿に、ぜひ一度触れていただけたら嬉しいです。
制作クレジット
制作:株式会社mood(杉田)
担当領域:居酒屋甲子園2025 ステートメント動画 企画・構成・編集・ディレクション
「余韻」をデザインし、記憶に残る体験を。