第17回 居酒屋甲子園 全国大会 運営企画
2024年10月22日(火)、福岡サンパレス。第17回 居酒屋甲子園 全国大会が開催されました。全国1,420店舗のエントリーから勝ち上がった5店舗と、優秀店長2名がステージに立つ一日です。株式会社mood(担当:杉田)は、イベント全体の企画・制作・演出・運営から、登壇者のプレゼンテーションプロデュース、本番使用映像の制作、当日のダイジェストムービー撮影・編集までを担当しました。
この大会には、中心にいる一人がいない|イベント全体企画
この大会に関わり始めたのは、2012年の第7回のときでした。そのとき、まず気づいたのは構造のことです。
普通、これだけの規模のイベントには中心にいる一人がいます。カリスマが壇上から語り、客席がそれを受け取る。けれど居酒屋甲子園はそうなっていません。同じような立場の人が、それぞれのステージで自分の言葉を話している。プレゼンテーションという形式をとってはいますが、起きていることは対話に近い。
理念「共に学び、共に成長し、共に勝つ」と、目的「居酒屋から日本を、世界を元気にする」。NPO法人居酒屋甲子園が2006年の第1回から掲げてきた言葉が、そのまま会場の構造として現れている。あのとき自分が受け取ったのは、人の言葉は、うまくなくても伝わるのだという事実でした。
だから運営として最初に決めるのは、演出案ではありません。この構造を崩さないことです。演出でどこかに中心をつくってしまえば、この大会は別のものになります。
「革新」を、スローガンとして扱わない|企画・演出
第17回の年度テーマは「革新」でした。氏田善宣理事長のもと、一年を通して掲げられてきた言葉です。
こういうテーマは、扱い方を間違えると当日その場だけの飾りになります。スクリーンに大きく出して、司会が意味を説明して、それで終わり。参加者は「今年はそういうテーマなんだな」と受け取るだけで、自分の話にはなりません。
だから設計では、テーマを説明する時間をつくらないほうを選びました。代わりに、当日の構造そのものが革新になっているかを基準にしています。
そもそも第17回は、全国大会を福岡サンパレスで開催するという判断がありました。会場が変われば、集まる人の顔ぶれも、そこまでの距離も、当日の空気も変わります。テーマを言葉で語る前に、大会そのものが動いている。その事実を、演出で塗り潰さないようにしました。
タイムテーブルに、進行ではなく感情の起伏を書き込む|制作・演出・運営
大会は長丁場です。この長さを進行表だけで組むと、必ずどこかで会場が疲れます。
なので自分たちは、タイムテーブルに感情の起伏を先に描き込みます。どこで高鳴り、どこで静まり、どこで涙し、最後にどんな気持ちで会場を出るのか。それを決めてから、プログラムの順番と尺を当てはめていく。
難しいのは、要素の性質がバラバラだということです。5店舗のプレゼンテーション、優秀店長2名の発信、来場者投票、表彰式。放っておけば、種類の違う時間が順番に並ぶだけになります。ここを一本の糸でつなぎ直しました。司会者の言葉選び、転換時の照明と音響、客席の空気を整えるショート映像をどこに差し込むか。すべては、来場した一人が自分の話として聴ける一日をつくるためにあります。
運営面では、出場店舗の関係者、業界スポンサー、学生、メディアと、立場の異なる人が同じ会場に混在します。動線設計で意識したのは、誰もが「自分の居場所がある」と感じられることでした。招かれた側と主催する側が分かれて見えてしまうと、共に学ぶという理念が会場の作りと矛盾します。
登壇者を、技術で武装させない|プレゼンテーションプロデュース
ステージに立つのは、日々現場に立つ店長やスタッフです。自店の理念と取り組みを、同業者の前で語り切ります。
自分たちがプレゼンテーションプロデュースでやっていることは、話し方を教えることではありません。事前から対話を重ねて、何を伝えたいのか、なぜそれを伝えたいのかを一緒にほどいていく。原稿は代筆しません。まずご本人に書いていただき、読んで「格好つけているな」と感じた箇所だけ、もう一段深く聞く。
技術で整えることは、やろうと思えばできます。ただ、整えるほど、その人がその人でなくなる方向に進みます。ステージに立つのは飲食のプロであって、プレゼンテーションのプロではありません。そこを取り違えると、上手いけれど誰の話でもないプレゼンテーションができあがります。
判断の基準にしたのは、どういう人が聞いて、どういう気持ちになったらこのプレゼンテーションは成功と言えるか、という勝ち筋です。それを先に決めてから、ご本人らしさを出したスピーチがその勝ち筋に合っているかどうかを見ていく。上手いか下手かでは判断していません。
映像は、主役になってはいけない|本番使用映像制作
オープニング映像、登壇店舗の紹介映像、転換用映像、表彰式演出映像。本番でスクリーンに投影される映像もすべて制作しました。
意識したのは、映像が主役にならないことです。主役は登壇する5店舗と優秀店長の2名であり、映像はそこに至るまでの呼吸を整える役割にとどめる。映像は言葉以外の語り部ではありますが、語り部が主人公になってしまえば、その一日は映像の一日になります。
会場の空間条件も設計に含めています。後方席にも意図が届き、同時に前方で見ても粗く見えない。スクリーンサイズと座席距離を踏まえて、一画面あたりの情報量を決めました。
成果物は、当日ではなく余韻|当日ダイジェストムービー撮影・編集
当日は複数台のカメラを配置し、ステージ上のプレゼンテーションだけでなく、客席で涙を流す方、肩を組む登壇店舗、表彰の瞬間に駆け寄るスタッフまでを記録しました。
ダイジェストムービーの編集で気をつけたのは、盛り上げすぎないことです。強い音楽と速いカット割りを重ねれば、映像としては派手になります。ただ、それをやると、その日を過ごした本人の記憶より映像のほうが強くなってしまう。記憶が上書きされたら、それは記録ではなく別物です。登壇者の表情、客席の眼差し、会場全体の空気を、時間軸に沿って積み重ねる構成にしました。
自分たちが成果物と考えているのは、当日ではなく余韻です。この映像は、参加された方にとっては記憶のしおりになり、参加できなかった方にとっては第17回の熱量を知る窓になり、次の大会へ向かう業界全体の機運を支える資産になります。そこまでが射程だと思って編んでいます。
居酒屋甲子園の最新情報はこちらから
大会の最新情報、これまでの活動の軌跡、業界活性化に向けた年間の取り組みについては、NPO法人居酒屋甲子園 公式サイトにて随時更新されています。
2012年の第7回から、この大会に関わり続けています。
制作クレジット
制作:株式会社mood(杉田)
担当領域:イベント全体企画・制作・演出・運営・プレゼンテーションプロデュース、本番使用映像制作、当日ダイジェストムービー撮影・編集
「余韻」をデザインし、記憶に残る体験を。