会社の価値観を、まだ言葉にしていない|Valuesを空欄のままにしている理由
自分たちの会社のブランドコンセプトをまとめました。Purpose、Mission、Vision、サービスコンセプト。全部決まっています。ただ、Valuesだけは空欄にしてあります。
作れないわけではありません。一晩あれば作れます。これまでの発言を集めて、それらしい5項目に整えれば、体裁は整う。会社案内にも採用ページにも載せられます。自分たちが採らなかったのは、その選択肢です。
理由は二つあります。
一つは、Valuesが判断基準だからです。判断基準は、普段は言葉にせずに身体で運用しているものです。提案を通すか通さないか、その人を採るか採らないか、演出案を残すか外すか。決めるときに、いちいち基準を読み上げてはいない。それを机の上で一気に製造すると、できあがるのは発言の要約で、要約は借り物になります。載せた翌日から、自分たちの判断とずれていく。
もう一つは、言葉にした瞬間に固まってしまう怖さです。MissionやVisionは行き先で、点です。点なら、そこへ向かう道は何本あってもいい。Valuesは、その道の指定になりやすい。「この生き方で行こう」と書いた瞬間に、それ以外の生き方が社内で選びにくくなる。自分がいちばん嫌いなのは同調で、Valuesがその装置になる可能性を、まだ消せていません。
しかも自分たちは、クライアントの社員総会で「文化はつくるものではなく、育てるものだ」と言っています。会社の中にすでにあるものを見つけて、育てて、循環させる場をつくる。それが仕事です。その会社がValuesだけ一晩で製造したら、嘘になります。
だから、採集しています。
素材が出てくる場面は、だいたい決まっています。一つは、何かを断ったとき。提案を却下したとき、採用候補を見送ったとき、演出案に「これは違う」と言ったとき。その場で口をついた理由の言葉です。もう一つは、社外の人と自分たちの会社について話しているとき。「仕事で大事にしていることは何か」と聞かれて、整えずに答えているうちに出てくる言葉です。どちらも、後から整えずに、出てきたままの形で残しています。順番にすると、こうなります。
- 判断した場面を逃さない。通したときより、断ったときのほうが基準は言葉になりやすい
- その場で口から出た理由を、そのままの言葉で残す。整えない
- 溜まったものを時々見返す。別の場面で同じ言葉が出ていたら、それが基準
- 十分に溜まったら、そこから選ぶ。足りない項目を作って埋めない
いま溜まっているのは、たとえばこういう言葉です。非合理。白黒つけない。カオスを楽しむ。感情が動くか。頭を使うとは、現状を把握すること。楽しいではなく、楽しもう。声をかけてもらえて打席に立てること自体が、ありがたい。まだValuesとして整えていないので、このままの形で置いています。5項目になるのか3項目になるのかも決めていないし、決めたあとで更新してもいいと思っています。これから入ってくる人が、この中から共感できるものを選び取っていけば、それでいい。
明日ひとつだけ試すなら、自分の会社のValuesを一つ選んで、最近の判断に当ててみる。先週断った案件、見送った候補者、外した企画。そのときに口から出た理由と、Valuesの言葉が一致しているかを見る。一致していれば、それは身体で運用されている基準です。していなければ、そこが空欄です。
自分たちのValuesは、まだ空欄です。今の段階では、それが正しい状態だと判断しています。