ANF「バーニングマン2026」オープニングムービー制作
株式会社ANF様の第一回社内イベント「バーニングマン2026」(2026年3月30日/大阪市中央公会堂)のオープニングムービー制作を担当させていただきました。4店舗が壇上に立ち、自分たちの想いを言葉にして競うという一日。その開演を告げる3分27秒です。
第一回のオープニングは、「この場が何の場なのか」を定義する
制作で最初に決めるのは演出案ではなくゴールです。終わったあとに参加者にどんな気持ちで席を立ってほしいか。そこから逆算して、当日のタイムテーブルには進行だけでなく感情の起伏を書き込んでいきます。
ただ今回は第一回でした。過去の映像も、去年の空気も参照できない。参加者はまだこのイベントが何のための場なのかを知らない状態で客席に座ります。つまりオープニングムービーは、開演の合図であると同時に、この場の定義そのものを担うことになります。
ANF様は大阪を拠点に、コギソウル、OKOGE、COMMA,、ヒョンギョン、Sojun、だるま道場、WINSといった性格の異なるブランドを展開されている会社です。平均年齢27歳、500名。普段は別々の店舗で働いている全員が、この日はじめて同じ客席に座る。その前提から、映像の役割を「盛り上げ」ではなく「合意形成」に置きました。
ゴールから逆算する|登壇者が本気で語れる空気をつくる
このイベントの主役は、映像ではなく壇上に立つ4店舗です。日々の営業の中の葛藤や、それでも前を向いてきた理由を、自分の言葉で話す。発表というより告白に近い時間になることは、企画段階から想定していました。
そういう場で怖いのは、客席が「評価する側」の顔で座っていることです。少しでも斜に構えた空気が残っていると、登壇者は本音を出せません。だからこの3分27秒のゴールは、映像が終わった瞬間に客席から傍観者の姿勢を消しておくこと、その一点に絞りました。
私たちは、登壇者を演出の技術で武装させないという考え方を大事にしています。話し方を整えるのではなく、その人がその人のまま話しても届く客席をつくるほうが早い。オープニングムービーは、そのための下ごしらえです。
構成|諦めの言葉から始め、「楽しむ」に反転させる
冒頭は鼓舞から入っていません。やりがいよりも現実でしょ、普通に考えて無理でしょ、やっても意味がない。日常で耳にする言葉を、色を落とした街のカットに重ねるところから始めます。そして、そうやって理由を並べるたびに動かないことに慣れていく、と続きます。
ここを飛ばしていきなり前向きな言葉を並べると、映像は他人事になります。まず今の自分に心当たりのある感覚を差し出し、そこから少しずつ色を戻していく。傍観者になるな、安全な場所に未来はない、居心地のいいほうを選ばなかった人だけが次の景色を見る。言葉を段階的に強くしていく設計にしました。
折り返し地点は「楽しい、ではなく、楽しむ。」という一行です。ANF様のスタンスである「楽しむ心で、最高のパフォーマンスを」を、そのまま掲げるのではなく、受け身の「楽しい」と能動の「楽しむ」を並べて差分を見せる形に翻訳しました。楽しむことは逃げではなく前に進む力である、という社内で語られてきた考え方を、言葉ではなく構文で見せたかったからです。
そこから「『私たち』を定義するものなんて、何もない。だからこそ、何にでもなれる」で可能性の側に反転し、「心に残る、エンターテイメントを」「楽しむ心で、最高のパフォーマンスを」というミッションとスタンスを経て、「全ては、たった一人の情熱から始まる」に着地します。企業理念を冒頭で提示せず、最後に置いたのは、それが説明ではなく結論として届いてほしかったからです。
実写パート|ブランドは違っても、同じ顔をしている瞬間がある
実写は、複数のブランドの現場で撮影しています。韓国料理店の熱気ある厨房、短冊メニューが並ぶカウンター、和の装いのスタッフ、ホールを走る足元。内装も客層もリズムもまるで違います。
性質の異なる要素をそのまま並べると、映像は店舗カタログになります。ここで通した一本の糸が、期待を上回る価値を届けようとしている瞬間の表情でした。業態が違っても、目の前の一人に向き合っているときの顔だけは同じ。その共通点でつないでいくことで、多ブランドであることが散らばりではなく厚みとして見えるようにしています。
撮影ではスタッフに演技をお願いしていません。注文を受ける一瞬、鍋を返す一瞬、目が合って笑う一瞬を待って撮っています。カメラのために整えた瞬間、この映像は「よくできた採用動画」になってしまう。客席に座っているのは撮られた本人たちです。自分たちの日常が嘘なく映っていることが、この映像の説得力のすべてでした。
仕上げ|炎のタイトルバックと、そのあとの余韻
ラストは実写の炎を素材にしたタイトルバックで「BÜRNING MAN 2026」を提示します。イベント名を映像言語にそのまま翻訳したパートで、ここから登壇に切り替わった瞬間に会場の温度が変わっていることがゴールでした。
私たちが成果物と考えているのは、当日ではなく余韻です。この日生まれた熱をそれぞれの店舗に持ち帰り、日々の営業で形にしていく。そこまでが射程だとすれば、オープニングムービーは開演の演出ではなく、一年分の姿勢をつくるための最初の一手ということになります。第二回の客席には、この3分27秒を覚えている人が座っている。そこまで含めて設計したつもりです。