DIC アガモスフィア® コンセプトムービー制作
DIC株式会社様の球体ドローン「アガモスフィア®(HAGAMOsphere®)」のPV制作を担当させていただきました。59秒。土俵の上で二機が組み合う相撲の見立てで、この機体にしかできないことを見せる一本です。
コンセプトモデルを、どう伝えるか
アガモスフィア®は、立方体フレームに8つのプロペラを搭載し、独自の制御によって機体を傾けずに水平・垂直へ移動できる球体ドローンです。幾何学形状の球体ガードに格納すれば、地上を転がりながら自力で移動もできる。空と陸の両方で動けるという、言葉にすると一行の特長を持っています。
ただしこれは製品化前のコンセプトモデルであり、DIC様が徳島大学の三輪昌史准教授、菱田技研工業様と産学連携で開発を進めている段階のものです。仕様の説明を積み上げる映像にしても、まだ検証しようがない。それより、この機体と組んだら何ができそうかを見た人が想像できる状態を作るほうが、プロジェクトの目的に合っている。企画はそこから逆算しました。
相撲という翻訳
ブランドや技術が持っている言語を、演出の言語に置き換える。これは自分がイベントでも映像でも一貫してやっていることです。今回置き換えたのは、転がる・ぶつかる・倒れない・起き上がるという、この機体の運動特性でした。
それをそのまま成立させる舞台が、土俵でした。押し合う、はたく、土俵を割る。相撲の文法はこの機体の挙動と驚くほど相性がよく、しかも観る側は説明なしにルールを知っています。スペックを一つも読まずに、強度と復元性と機動性が伝わる。日本発の技術であることも、同じ一枚の絵で伝わります。
赤と青のジョイントで二機を色分けしたのも、勝敗が一目で追えるようにするためです。技術PVでありながら、観戦体験として成立させる。そこを外さないよう美術と照明を組みました。
照明|細い骨組みをどう見せるか
被写体は黒く細いフレームの集合体で、放っておくと暗闇に沈みます。土俵だけに光を落として周囲を落とし込み、逆光気味のトップライトで輪郭を立たせ、赤と青のジョイントが視認できる角度を探しました。地面すれすれのローアングルを多用したのは、土の質感と土煙を拾うためです。
演出が主役になってはいけない、というのは自分が守っている原則です。この映像で主役はあくまで機体で、照明も美術もカメラも、機体の動きが読み取れる状態を作るためだけに存在しています。
この映像に持たせた役割
DIC様はDirect to Societyという考え方のもと、このプロジェクトを新事業創出の試みの一つと位置づけ、協業していただけるパートナーを募集されています。つまりこのPVは、製品の販促物ではなく、まだ形になっていない可能性への招待状です。
だから最後は勝敗を描き切らず、静けさに戻して終わらせています。観終わったあとに残るのが「すごい」ではなく「これで何ができるだろう」であれば、この一本は役目を果たしたことになります。