DREAM ON「Dream forum」ムービー制作
株式会社DREAM ON様の社内イベント「Dream forum」で上映するムービーの制作を担当させていただきました。新宿の店舗を主役にした1分53秒。会場で全社員が同じ画面を見る、その一本です。
社内で上映する映像は、社外向けとつくり方が変わる
制作で最初に決めるのは演出案ではなくゴールです。誰に、何を持ち帰ってほしいか。社外向けのブランドムービーであれば「行ってみたい」と思わせれば成立しますが、社内イベントで上映する映像のゴールはそこではありません。
客席に座っているのは、同じ会社で別の店舗に立っている仲間です。しかも画面に映っているのは、その中の一店舗。よその店の紹介として見られてしまった時点で、この映像は失敗します。だから設計上のゴールを、「新宿がすごい」ではなく「自分の店でも同じことができるはずだ」と思ってもらうことに置きました。
DREAM ON様は「すべてのお店がデザインもコンセプトもメニューも全部違う」「みんなで考えてみんなで創る」という考え方で店舗を増やしてこられた会社です。全店共通のフォーマットがないからこそ、一店舗の話を全社の話に翻訳する役目を、この映像が引き受ける必要がありました。
主役は店ではなく、そこにある「好き」
映像の軸に置いたのは「好き」という言葉です。この飲食が大好き、という一人称から始めて、最後に「このお店はたくさんの好きであふれている」に着地させる。個人の動機から入り、それが集まった状態として店を定義する順番にしました。
逆にすると、店のコンセプト説明が先に立って、働いている人があとから紹介される映像になります。それでは「僕らは人が輝くお店でありたい」という会社の考え方と順番が逆になってしまう。人が先、店があと。この並び順だけは崩さないようにしています。
だから内装やメニューのカットも、美しく見せるためではなく、誰かの「好き」が形になったものとして撮っています。青いタイル、真鍮のランプ、手書きで壁に残された言葉。設計されたデザインというより、積み重なった痕跡として映るように意識しました。
演じさせない。壁の落書きまで含めて、その店の言葉
私たちはイベント制作でも、登壇者を技術で武装させないことを大事にしています。話し方を整えるより、その人がその人のまま話せる状態をつくるほうが、結局いちばん届く。映像でも同じで、スタッフに笑顔をつくってもらう指示は出していません。
印象的だったのは、壁に手書きで残されていた来店客と店のやりとりでした。作り込んだメッセージボードではなく、その場で書かれた文字。この店が日々どんな関係をお客様と結んできたかが、演出では絶対に出せない密度で残っていました。
「あなたに会いに来たよ」と言ってもらえる店をつくる。「店作りは街作り」。会社が言葉にしてきたことが、この壁の一角にすべて出ていると感じたので、そこは説明を足さずにそのまま置いています。
1分53秒を、その日の感情曲線のどこに置くか
社内イベントの映像は、単体の出来より置かれる位置のほうが結果を左右します。当日のタイムテーブルには進行だけでなく感情の起伏を書き込んでいて、この映像はどの山の手前にあり、直後に誰が何を話すのかまで含めて尺と温度を決めています。
1分53秒という長さは、情報を詰めた結果ではありません。長くすれば一店舗の話に見えてしまい、短くすれば感情が動く前に終わる。会場が静かになって、そのまま次のプログラムに入っていける長さを探した結果です。
私たちが成果物と考えているのは、当日ではなく余韻です。イベントが終わって各自の店舗に戻ったあと、自分の店の「好き」を誰かに話したくなっていること。そこまでが、この映像の射程だと思っています。「毎日が冒険」「ビジネスよりワクワクを優先する」という会社の姿勢を、上映という形で一度全員に返す時間でした。